その6 作品作りのへそ
起承転結、好奇心と行動
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ビデオ作品を楽しく作って、見せたい人に「上手い!」と言ってもらえるための基礎編のまとめになります。ビデオ作品はどう構成したらわかりやすくなるか、また、題材をどう見つけ、その後何をすればいいのか作品作りで大切なポイントが今回のテーマです。作品を構成する上で大切なことは作品の起承転結を付けることです。文章を書くうえでよく使われる言葉です。この「起承転結」を辞書で調べると起承転結とは中国の漢詩の句の配列です。第一の句で詩思を提起し、第二句で第一句を受け、第三句詩を一転し、第四句で全詩を総合するとあります。漢詩の「楓橋夜泊」を例にすると、作者張継が蘇州西外の楓橋のたもとで船泊した時に夜景を詠んだ詩です。第二句を受けて作者の置かれた環境や状態を示していますが、第三句でいきなり転じて夜で見えない寒山寺に移り、第四句で全体をまとめています。映像における「起」の部分はファーストシーンで、ファーストシーンは起承転結の「結びにあたるラストシーンとともに作品として重要部分を占めます。ファーストシーンは作品の導入部ですので、まず見る人に作品に対する興味を引き起こす必要があります。また作品の内容を暗示する部分でもあります。つまり、見ている人にこの作品をみてほしいと思わせることが大切です。しかし、残念ながらアマチュア作品の多くはこのファーストシーンがなく、いきなり「承」から始まったりしています、。コンクール応募作品で考えるとこのファーストシーンの良し悪しが審査員の判断に大きく影響するのは事実です。作者は「起」から始まる起承転結を意識してビデオ作品の制作にあたるのが良いと思います。 |
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映像作品で大切な 起承転結を詳しく書きます。「承」の部分は作品の大部分を占める部分です。次の「転」に向けてストーリを展開してゆく部分ですが、ここでいくつかの小さな話が積み重なっていて、見ている人に次がどうなるのであろうかという気持ちを起こさせる必要があります。「承」の部分を構成するいくつかの話にも起承転結をつけねばならないと思います。「転」は作品のクライマックスにあたる部分で、話が劇的に変わるところです。私たちの作品ではドラマ仕立てやドキュメント作品でない限り「転」の部分は劇的に変わりませんが、作品の「転」の部分であるラストシーンにつなげる部分として、山場を作る工夫をしたいものです。そして、「結」の、これは作品のテーマが語られる部分なので単なる終わりにしてはいけません。作者がその作品で何を言いたかったかをしっかりここでまとめます。また、作品にとってタイトルも重要です。タイトルは作品の顔であり、その作品を見てみたいと思わせるものでなければなりません。前回紹介した「水没村を支える伝統芸能」は単に「でくまわし」か「ダム」ではつまらない。やはり作品の中で展開する「でくまわしという民族芸能」を通して人とのつながりできることを描くとより鮮明になります。 |
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作品作りの技量と作品のクオリィテイを高めるためには企画・構成・撮影・編集などどれもおろそかにはできません。しかし「どんな作品をどのように作るか」というきちんとしていなければ、説得力がある作品はできないのです。
そのためには
@いろいろなタイプの作品を数多く作ること
A作った作品を批評してもらうこと
B他人の作品をみること
Cテレビや映画から学ぶことがあれば取り入れること
が大切です。
例えば、タイプとして風景を題材にしたもの、人を題材にしたドキュメンタリー作品、歴史を題材にした作品などいろいろな作品に挑戦してみて下さい。そのようにしていく中で、やがて自分の作風が確立できるのではないでしょうか。私たちにとって題材は山ほどあります。自然を扱ったもの、紀行作品、家族の記録、自分史、映像詩、環境ビデオ、社会時評などさまざまです。作り方も人の生き方を描く人間ドキュメント作品、風景とそこに暮らす人とを通して風土を描く作品、社会現象の中から時代を切り取る作品など多岐にわたります。このように作品の題材や作り方は数多くありますが、まず自分が興味を持てるものがよいでしょう。それを作品にした時、何を伝え、何を言いたいか、どこを見てほしいか、そして、自分がその作品を見る立場てあったら、はたして興味を持てるだろうかを考えてみて下さい。 もうひとつ大事なことはどのような題材を見つけるかです。それには3つのポイントがあります。
@「情報源をもつ」
新聞、タウン誌、情報の多い雑誌、、情報の多い友人など A「好奇心をもつ
「何かないかなー」と漠然と探しているのでなく、「へーこれなんだろう」「なぜな んだろう」「これは作り方によっておもしろいぞー」と好奇心を持つことです。 B「身軽に動く」です。
題材が見つかったら、早速、現場へ行き人の話しを聞いてみる。
このように作品作りのきっかけが掴めるのではないでしょうか。しかし、新しい発見やありきたりの題材をどう見せるかです。ありきたりの題材でも視点を変えることによって新鮮な印象を持つこともできます。題材やテーマは自分がこれと思えるものに出会うことが第一。それに、ただ待っていても駄目ですね。積極的に探したり、また人にあって話しを聞くことが大事です。インターネット、知人など、たくさんアンテナを張り、これと思ったら出かけてみることです。 |
私はよく旅をします。以前にヨーロッパ12日間、カナダ8日間、台湾4日間、ハワイ6日間の海外旅行を始め、国内の祭り、自然風景の写真やビデオを撮りに出かけます。ビデオ撮影をする時、誰もいない自然を撮る場合を除いて何らかの形で人の姿や生活が写り込んでいると思います。特に映像作品を作る場合はどのような人を取り込むかは大切なポイントになります。なぜなら、そこに住む人の姿から現地の様子が分かるからです。ただ、人が相手ですので、ずかずかと踏み込んで撮影することは御法度です。相手の許可を取って下さい。また、何かの情報を得たい場合や交流を持ちたい場合は臆せず真っ正面から触れ合って下さい。そうすれば作品に生かすことができます。 |
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