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 映像でいい素材を集めてくることも大切ですが、作品づくりで大事なのはその後の編集で素材をどう使って、どういうふうに作品を作っていけばよいかということです。そこで、ここでは編集について細かく考えていきましょう。作品の仕上げ、いわゆる編集にあたってどのようなことを重点として考えていけばよいか、人によっては本格的に編集用の台本を作って取りかかる人、あるいはほとんどの人は撮影した素材をパソコンに取り込んで、ソフトのタイムラインに並べて作業にかかるのではないでしょうか。そして、次の段階でカットを並べ変えのですが、その際に何か意図があって変えているはずです。ただ、並べ変えるには何の目的もなく並べるのでなく、見る人に何を伝えたいか考えて下さい。そのためにはどうしたらいいのでしょか。画だけで充分伝わる場合もあるでしょう。また、音楽によって思いを伝えることもできるでしょう。でも、映像作品ではナレーションの助けを借りなければならないことが非常に多いのです。ナレーションこそが作者の思いや考えを作品を見てもらう人に一番強く伝える手段でないでしょうか。つまり、ナレーションから考えることが作品の土台を作ることなのです。従って、まず編集編ではナレーショについての解説をしていきたいと思います。 

 

  
  上図のようにナレーションの役割には作品の構成、作者の思いの表現、画面の補足説明の3つに分けられます。作品の作り方によって、ナレーションは作品の構成そのもが大事なものになるので、しっかり考えて映像に付け加えたいものです。作品ができた時、その映像がすべてを語ってくれればナレーションは必要ないでしょう。でも映像だけでは伝えきれないものがあります。では、映像にどんなナレーションを付けたらよいのでしょうか。映像に付けるナレーションは、普通の文章を書くのと大きな違いがあります。それは画面を念頭において書かかなければなりません。つまり画面との関係において綿密に計算されていて、ある時は画面に密着し、ある時は離れたものであるべきです。無駄のないわかりやすく、聞きやすいナレーションにします。作品によって切れ目なくナレーションが続く作品があって、作品の本質を掴めていないのでこのような作品になるのです。画面との計算がうまくいけば見事な効果をもたらし、作品を見違えるように良くなります。
     
 映像から伝える情報量は多いのですが、しかし画面だけでわからない場合かあります。例えば仕組みの 機械が映っている場合、それをナレーションや説明テロップで補ってやれば見る人か゜理解できるでしょう。しかし、基本的には画面に関連のある画面から伝えられない情報を伝えるのがナレーションの役目です。つまり、映像だけでは説明できないものを補うことによって、内容を深めていくのがナレーションの務めなのです。例えば、上図の画面で私が受けた講習会で使われた作品です。鍾乳洞を訪れたシーンでは、シーン1.2はありふれたナレーションですがシーン3は「神が与えた自然の造形が、地元に住む人たちに日々の糧をもたらす」を 付け加えています。このようにドキュメンタリー作品はそこに潜む問題点を作者の言葉で語るナレーション、紀行作品に見られる情緒的な語り口で画面を補足しながらムードを作り出すナレーションなど、作品の狙いによって画面の作り方が変わるようにナレーションもスタイルやテンポが変ってくるのです。ナレーションの使命がわかったところでもうひとつ、ナレーションを書くにあたって大切なことは「わかりやすい」ことです。わかりやすいナレーションは「話言葉」と「耳で聞いてわかる」ことです。これが映像のナレーションの必要条件です。そのためにはひとつひとつのナレーションで、「何を伝えようか」「伝えたいことの中身は何か」を考えながら、そのための表現はどういうものがふさわしいかを吟味することか必要です。そして、わかりやすいナレーションを書くには、大事なことを先に書いて、難しい言葉を使わないことです。これを克服するには、「聞いてわかる文章」を何度も書いてみると、耳ざわりな言葉や聞いてわかりにくい表現が読んでいると必ずつかえるところなどが出てきます。そこを手直ししていくことによって「聞いてわかる文章」が身に付いてきます。
 
  ナレーションは基本的にはシーン単位で書かれるものですが、シーンの長さが限られています。その限られた時間の中で言いたいことを言いつつ、必要な要素を盛り込んでナレーションを書かなければなりません。あれもこれも書きすぎると。映像からはみ出てしまいます。思いをこめて書いた長い文章は捨てがたいものです。例えば、偉大な功績を残した人物を素材にした作品は資料写真が多くなって、ナレーションを始めから終わりまでナレーションを付けてしまって、作品としては物足りない、見ている人に飽きやすい作品になってしまいます。このような場合は、ナレーションの工夫によって画を変えて構成に変化を付け、語る部分を断続的に配分することによって飽きない作品にすることができます。 そこで限られた時間に有効なナレーションを付けるには、必要な要素を簡潔に書くこと、同時に映像に付加価値を付けるナレーションを考えることが大切です。画面に写っているものを語るだけだと紙芝居を見ているようだと言われてしまいます。是非、映像を引き立てるようなナレーションを付けて下さい。
 例えば、上図の場合「見事に咲いている花畑です」など付けると見れば分かると言われます。画面に映し出された花畑からは、花の種類、大きさ、周辺の状況まで見る人に伝わってきます。これに付加価値を付けるには香りの情報、花の感触、味という要素、花を育てた人の思いを現場に行った人が伝えるのです。いろいろと考えられる要素の中からふさわしいものを選んでナレーションにするのです。撮影現場で撮影するこはもちろんですが、付加価値を付けるナレーションの材料やヒントを集めることによって、映像の内容を深めることになります。
 もうひとつは時間的配分ですが、作品の中のナレーションの占める割合は一概に言えませんが、全尺の50%以下が良いと言われています。言いたいことがあるからといって詰め込むことは避け、余白を作ることで言葉に重みや余韻を持たせ、その配分も音楽や効果音と合わせて、適切な場所に付加価値のあるナレーションを作るコツとなります。また、 ナレーションの形として非常に簡潔な文章にする場合があります。必要なことのみ、できるだけ簡潔に伝えることで見る人に自由に感じたり思いをはせてもらうことができます。これも作品の狙いのひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。

 

 映像作品において、画面内容とともに音声も重要なファクターです。作品の印象や質を大きく左右すると言っても過言ではないでしょうか。音声はともすれば画より軽視されがちですがこれに気を配って、しっかり作業すれば「差」ができるはずです。作品の音楽を選ぶ場合、自分だけで楽しむならばどんな音楽を付けてもかまわないのですが、ビデオコンクールなど公開発表会に出品する場合は、著作権がからむので著作権フリーの音楽を選ばなければなりません。私たちアマチュアの作品はそれが大前提です。ですが、私たちはこの難しい選曲を自分で選ばなければなりません。しかも音源の数は限りがあり、なかなか作品にあった音楽を見つけることはできません。しかし、最近はアマチュア作品のための著作権フリーのCDが販売されています。どうしてもプロの制作した音楽を使いたい場合は音楽著作権協会(JASRAC)に許可をもらって下さい。作品にあった音楽を選べば作品の質は飛躍的に上がります。良い音楽を選び作品の中で上手に使う。それが今回のテーマです。

 それでは映像作品に付ける音楽について、いくつか要点を挙げます。まず、映像には起承転結があったように映像に組み合わされる音楽にも「起承転結」があるのです。音楽は映像で表現された感情を具体化します。ナレーションやテロップなどの言葉は状況を説明するのが得意ですが、音楽は感情に寄り添い引き立てるのが得意です。ドキュメンタリーやドラマでは、音楽の組み合わせで上手に流れを作ってやると視聴者の感動を倍増します。そして、音楽が入った瞬間にシーンの空気が変わります。その音楽の力を作品に生かしてみて下さい。「話の変わり目」「感情の変わり目」「行動のはじまり」「衝撃的なセリフを受けて」などが新しい曲のスタートポイントです。 
   
6E音楽以外にも映像作品にはいろいろな「音」が存在します。映像の音声はナレーション、現場音、音楽、効果音があります。映像作品の「音」の中で一番大切なのはナレーションでしょう。ナレーションは聞きやすくてはなりません。従って、ある程度大きな音量になります。現場音の喋っている音やインタビューの音も優先して大きくします。従って、音量を決める場合はナレーションと聞かせたい現場音を基準にして音楽、効果音と決めていきます。ただ、人間には一度にたくさんの音を理解することはできません。せいぜい2つぐらいでしょう。そこで、例えば、ナレーションと音楽、現場音があるとするとナレーションと音楽にして現場音は音量を下げるか除外する。逆にナレーションの次に現場音を聞かせたい場合は音楽は除外するといいでしょう。
 それから、ナレーションと現場音が重なった場合はナレーションをずらして下さい。 音楽やナレーション、海の音も聞かせたいというシーンがあります。このような場合は全部一緒に聞かせることは無理です。そこで、音楽を少し聞かせてから、音楽の音量を少し下げ、ナレーションを聞かせ、ナレーションが終わったら波の音がでてきて、波の音をフェードアウトさせる。このように映像の流れの中で、その時最適な音が交互に出てくるように調整します。その際、音量の加減は自然に視聴者に気づかれないように行って下さい。一番聞かせたい音はひとつです。
 現場音、あるいは意図的につけた効果で音楽以上に効果的な盛り上がりを作ることができます。積極的に自然音を加えてやるのも演出のひとつです。撮影に行ったとき自然音を録音して自然音のライブラリーができます。例えば潮騒の音、川のせせらぎ、雨の音、街のざわめき、子供達の歓声、鳥のさえずりなどこれらは作品の中で生きてきます。
 
 
 編集ソフトによって多少違いますが、音声トラックは自由に増やすことができますので、その音
を並べて立体的な構造にして、音量のハランスに注意します。特に音楽の入口、出口の部分の処理に気をつけたいものです。アマチュア作品は音楽がいきなり途切れてしまうことが見受けられます。フェードイン、アウトなどの技法を使い、自然に音を消したり入れ替えることが音の編集のコツです。 

 

いよいよ画の編集について解説します。編集が担う役割、そして作業の順序や考え方を含めたポイントを理解し、作品づくりの最後の要塞となる編集作業を行います。作品を作るにあたって「撮影は楽しいから好き」でも、その後の「面倒だからいや」とか「コメントを書くのが苦手で何を書いていいのかわからない」という声を聞きます。しかし、自分の作品を見てもらい、理解してもらうには必ず行なわければいけない編集作業で避けては通れないのです。作品を作るには、企画、リサーチ、構成、撮影と進めて行きますが、その後の編集、ナレーションの作成、BGMやナレーションを入れるといった一連の作業を「ポストプロダクション」と言います。そして、完成度の高い作品は、この「ポスプロ」にかかっています。 
   
  編集にあたっては素材を基にして意図どうりの作品を作ることになるのか、意図を変えて作品を作ることになるのか方向性を定めなければなりません。撮影した素材を繰り返し見ることが大切です。素材チェックが編集の事前作業になります。撮影してきた素材をよく見て確認して頭の中に入れ、次に見た素材をどう作品に組み込んでいくかを考えます。そして、いきなり編集作業に入るのでなく、編集プランを立てます。実際に編集に入る前の図上プラン作りです。図上プランを作るには素材をどう生かせば狙いどうりのものになるか映像の流れを考えます。
 
  素材を見終わったら少し大きめの付箋紙を使って、撮ってきた素材を項目ごとに書き出して並べます。項目にならなくても印象的なカットやタイトルバックにふさわしいカットなど生きるカットも書き出しておきます。映像の流れはひとつではありません。素材の組み合わせによっては、いく通りの流れが考えられます。その中から自分の意図とする一番ふさわしい流れを、付箋紙を並べ変える中で選んでいきます。ただ、この段階で最初からこのカットはいらないと決めてかからないことです。一見つまらないカットでも別のカットをつなぐことによって生きたシーンになるからです。また、自分の気にいったカットを並べても生きた作品にならない場合があります。よく「編集とは捨てることだ」と言います。全体の内容に合わない流れを止めてしまうカットは、いくら自分の気に入ったカットでも使わないことです。
 今はパソコンでの編集が支流なのでモニター画面で画面内容を一覧することが可能です。サムネイルで画面が見えるのにわざわざ付箋紙をつくることをしなくてもと思うかも知れませんが、付箋紙に画面内容を確認しながら文字にしなくてならないので無駄な作業ではありません。

   
  次に図上プランに基づいて編集になりますが、本編集の前に粗編、つまり構成の基本を組む粗編集を先ず行います。この段階で気をつけたいポイントは上図の右側に8つ書いています。
 粗編集して一本つないだらところで試写して見て下さい。ここでチェックすることは自分の意図した通りの映像になっているかどうかです。なっていなければシーンやカットの入れ替えをして手直しをします。そして、次のことに注意します。
 @話の展開に無理なところや強引なところがないか。
 A画面がスムーズに流れているか
 Bカットとカットやシーンとシーンのつなぎがぎくしゃくしていないか
 C作品としてのテンポはどうか
 Dタイトルバックとオープニング、そして、エンディングはどうか
以上のことを粗編集の中で検討します。
 いよいよ本編集です。作品作りの最終段階ですが、本編集では
@作品の時間を意識する。
Aカットの長さを吟味する
Bフェードイン、フェードアウト、オーバラップなど内容に応じて効果的に使う
C意味のないトラジション(画面転換の際に使う効果の総称)は使わない
 以上のことを注意しながら本編集をおこないます。

 

 これで3つの講座も最終稿になりますが、皆さんは作品に対する考え方が変わったでしょうか。何事でもそうですが、好きであることが何よりです。諺にもあるように「好きこそものの上手なれ」とい言葉がありますが、好きであれば苦労も厭わず面倒がらずに作品づくりに没頭することができるはずです。 ここでは私はこれまでずっと多くのビデオ作品を見てきた感想も含めてまとめにしたいと思います。 編集で注意するのは画だけでなく、タイトルの付け方にも気をくばる必要があります。「タイトルは作品の顔」とある講座で教えられました。タイトルの付け方をはじめ、文字の大きさ、書体、位置、色など無造作に付けられているのが見受けられます。タイトルを含めてテロップについも同様です。作品をどこでどう見るかによって文字の大きさ、位置、色にも注意しなければなりません。また、作品にタイトルやテロップがどう入り、どう終わらせるかは作品の印象を決定づけます。作品を作るということはカメラと編集機を使って自分の感じたことや思っていることをどう表現するかだと思います。ここで、これまで述べてきたまとめになりますが、いくつか作品の評価のポイントを解説します。
● ファーストシーンとラストシーン
 起承転結の「起」の部分にあたるファーストシーンと「結」にあたるラストシーンは作品にとって特に大切な部分ですので、いくつかのカットで構成されているファーストシーンは作品のその内容を暗示し、見ている人に「面白そうだ、見てみたい」と思わせることです。そして、ラストシーンは作品全体の締っくりで作者の言わんとすることがここに込められているので、なおさら大切です。ところが作品を見ていると、せっかく良い流れで構成されてきているのに、最後になって尻切れとんぼで終わっている作品が見受けられます。特に、自分の伝えたいことを込めた作品や美しい風景を主体とした作品では、余韻を残すために印象的なカットをつないで終わらせたいものです。
●画面の流れを止めない
 言うまでもなく映像作品は画で見せるのが使命であり、ナレーションや音楽を加えることで、その映像をより深めるための手段だと思います。つまり画をどう見せていくかが肝心で、説明のテロップやナレーションがなくても画だけで見ている人に理解してもらえることが大事です。そのためにも画が自然に流れるようにつなぎます。ズームアップした途端に全く関係ない画がつながっている例を見かけます。ズームアップは被写体の一部を拡大することによって見る人の視線を引きつけるとともに興味を起こさせる意味があります。ここで画の連続性が止まってしまいます。ですからズームアップしたら、その部分をしばらく見せて、次のカットはその部分の関係ある画をつなぎます。
●流れにメリハリをつける
 アマチュア作品の傾向としてメリハリがないことが挙げられます。メリハリとは大きな構成でいえば「起承転結」です。もっと細かく言えばシークエンスごとのメリハリであり、さらにシーンの内のメリハリです。メリハリをつける手段は編集の基礎で話したように同じカットの大きさをいくつも並べない、同じ秒数のカットを並べないことです。カメラポジション、アングルを変える。ロング、ミディアム、アップの組み合わせ、そして、広角、望遠の画面に変化を付けるなどいくつかの手段があります。その手段を駆使して見る人を飽きさせない作品を作ることを心がけて下さい。
●画調を整える。
 明るさの異なったカットや色調の大きく異なったカットはパソコンのソフトに彩度や輝度、コントラストを整える項目がありますので調整します。例えば少しぼんやりした画はコントラストと彩度の調整、つないだカット同士の明るさの異なった場合は輝度と濃度調整、また、画面全体でなく、コントラストの強い画面の暗部だけを明るくしたりホワイトバランスが狂っている画面を直すことができます。撮影時の露出は逆光で人物の顔が暗いときは明るく補正する。このようにパソコンソフトで音の調整に合わせて画面調整も行って下さい。

 最終稿は編集にまつわる内容でしたが、手元にある素材をどう編集するかであり、編集に苦労しないためにも取捨選択できる素材を撮影時にたくさん用意することが肝要です。しかし、無目的に撮影した素材はいくらあっても役に立ちません。基本は撮影時にしっかり考えて撮影することです。今、撮影しているカットは何か、そこにどうつなげるか、次はどのようなカットにするか常に考えながら撮影していけば、編集時に素材が不足して困ることはありません。
 撮影時にこれから作る作品をイメージし、必要と思うカットを撮り集めていく、そして、編集ではその素材を最大に生かすべく、自分の伝えたいことを再確認する。それが作品づくりにあたってのすべてだと思います。是非見ている人が思わず乗り出して見てしまうような作品を目指して下さい。
 なお、今回のビデオ講座の掲載にあたってイラストや資料提供に多くのビデオ愛好家の皆さんにアドバイスを頂きました。ご協力ありがとうございました。
 いしかわビデオ作品コンクールの締め切りが迫っています。どうか良い作品を期待します。

      平成23年度いしかわビデオ作品コンクール結果
      平成24年度いしかわビデオ作品コンクール応募要項
 
資料「ビデオの作り方」からカットを掲載参照しました
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