我が家のリスニングルームに新たに導入したタイムドメインスピーカ(筒型スピーカ)
 

Lab beat製 (ラボ ビート)

 

上部から見た10cmのダイナミックスピーカユニット
平面スピーカで無指向性
○あらまし                                                   
 先日、知人のガレージメーカーラボビートより筒型スピーカ(=タイムドメインスピーカ)を我が家のリスニングルームに新たに導入。従来のスピーカーシステムと比較視聴をしながら、この機会にタイムドメインスピーカーの技術的内容を聞くことにした。そこで、私が理解した内容をまとめ紹介したい。今までの概念とかけ離れている不思議なオーディオである。アンプもスピーカーも妙に小さいのである?。知人が言うには、開口一番「音に対するコンセプトは"いい音"でなく"正確な音、生々しい音だ"という。「周波数領域」でなく「時間領域」つまりタイムドメインを重視しているのだ。確かにいい音は人によって個人差があるし、好き嫌いがあるけれど、"正確な音"というのは元の音を再現することなので、我々オーディオファンにとって目指すところは同じである。初めに技術的なことを2つ述べる。
1.インパルス応答(インパルスレスポンス)
 時間軸での波形を測定するには、スピーカーにインパルス信号を入れて音を出し、それをマイクで拾いインパルス応答の波形の分析をすると、この波形からタイムドメインスピーカと一般的な3ウェイスピーカとではかなり違うという。それは3ウェイスピーカの場合、箱鳴りによって原音とはかなり違いう。3つのスピーカーユニットから別々に音が出るので一致しないし、ドライバユニット固有の共振、そして、ネットワーク 回路にも問題があり、その結果、波形が崩れてしまう。要はインパルス応答というのは゛時間的分解能を含む波形忠実度を評価する゛というのである。インパルス信号をシステムに入力したときの再生音は、「ピシッ」、「ピチッ」と聴える。本当は「ポツッ」と聴える。インパルスがだぶって聴えるのは、何かの反射が原因によるものである。デジタルオーディオの信号はインパルスの羅列でできているので、その最小単位であるインパルスを入れて出力を見ればそのスピーカーの素性(正確性)がわかる。44.1KHz/16bit程度の小さなデシタルデータで記録された音を波形分析できないわけがなく、これまで分析の仕方がわからなかったのである。従来のオーディオシステムは周波数特性やひずみ率など重視していて、゛最後は耳である゛といわれていた。
※インパルス信号とは1サンプルだけ大きな音を出す極短い音のこと。
2.レイテンシー(遅延時間)
 次にもうひとつ気になるのがレイテンシー(遅延時間)である。入力に対する出力がある程度遅延時間が発生する。これはスピーカーの振動板の動作から振動板の移動時間がかかるため、それが遅れになる。しかし、約30μsで音には影響ない。もちろんスピーカの大きさによって異なるが、ミッドレンジやウーファーは0.5ms~3ms程度である。スピーカシステムによる遅れの場合、立ち上がり波形の不正確さやスピーカユニット個々の立ち上がりタイミングのズレに起因するので、単に遅れというよりも波形の崩れとして問題になる。やはり遅延時間が短いほど原音に近いということになる。
 本論のタイムドメインスピーカーの原理ともなる
タイムドメインの理論について述べることにする。


 タイムドメインの理論
タイムドメイン理論の発想は、音楽の感動を伝えるには何が必要か、それには何も加えず欠落せずに音源を100パーセント引き出し、ありのままに伝えるこが必要であるという考えから
、由井啓之氏がいままでの音響工学の常識をくつ覆した「タイムドメイン理論」に基づいて開発した筒型スピーカ である。従来のオーディオは、主としてフリケンシードメイン(=周波数領域、以下Fドメイン)で考えているので、音の波形は正弦波の集合で表すので、すべての(20Hz~20KHz)が正しく再生すればよいが、タイムドメイン(=時間軸領域)オーディオでは、時間領域で考えるから音はもともと空気の圧力が時間とともに変化するので耳で認識する。これを忠実に再生するということになり「音圧波形」を忠実にということになる。要約すると、従来のFドメインの考えでは「周波数成分を忠実に再生する」に対してタイムドメインでは「音の形を正しく再生する」ということになる。
 
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図1 ダイナミックカピーカの基本原理
 

図2 従来のエンクロージャ内部
 図1はダイナミックスピーカの基本を示す。信号電流に従って磁気回路の中に設けられたボイスコイルに電磁力が発生し、それにつながっているコーン紙が、音の形に従って振動し音を空間に伝える。
 
  従来方式は、ボックスの中では箱内の定在波や構造体の回折、反射、吸音材の影響を受けて再生される。
 

「Yoshii9」
タイムドメイン製
タイムドメインスピーカ
とアンプ

タイムドメインスピーカーの公式サイトは

こちらへ
 

タイムドメイン製スピーカの概念図

 ○「仮想グランド」 
 正確にコーン紙を動かすには磁気回路が動いてはいけない。しかし、従来方式では磁気回路はフレームを介してスピーカボックスのパネルに固定されているが、常にボックスやフレームが動いているので静止点とはいえない。従って基準とするコーン紙からの音は正確でない。タイムドメイン方式では磁気回路が仮想グランドにより固定される。この仮想グランドは、振動系に対して1000倍以上の慣性質量をもつ金属シャフトである。この振動をゲル状物質で空間に支持されているので理想的なグランドが「基準静止点」になる。
○「小口径シングルユニット」
 音圧波形を正確に再生するには必然的に小口径シングルスピーカーユニツトになる。従来のように多くのスピーカーユニットから出る音波は合成して元の波形にならない。また、口径が大きいと振動板が分割振動するので重くなってスムーズに動かないのである。
○「筒型」
 筒はエンクロージャーというよりも車の排気管に似た性質をもつので整流筒とでも呼ぶのが適当かもしれない。この筒は支持体として仮想グランドと一体化されたユニットを支えているが、ユニットとはゲルで遮断されているので、どちらの方向からも振動が伝わらない。筒の材料はアルミ、表面をホーニングで硬化したあとで硬質アルマイト処理、構造体としてのパイプ形状の剛性の高さと相まって内部音圧で振動することはない。ユニット後面からの圧力波はパイプに従って吸音材で減衰しながら下端に抜ける。
 
 タイムドメインスピーカの考察
○良い音を出すための条件

 スピーカが、音波の波形を伝えるには「コーン紙が目的の音波を再現できるよう正確に前後振動すれば良い」という。それには次の条件が必要である。
1.コーン紙は前後振動するときにゆがんだり、たわんだりしない。
2.コーン紙の周囲が完全に固定されている。基準点が静止している。
3.コーン紙から発した空気振動で、コーン紙を揺らすこと。つまり「共振」が起こらない。
そこで、タイムドメインスピーカでは次の工夫がされている。
○コーン紙は小さく、軽く、紙製であること。
次にコーン紙の大小、重軽についてのメリット、デメリットについて述べる。

比較項目   コーン紙が大きく・重い コーン紙が小さく・軽い 
レスポンス(立ち上がり)   コーン紙に力を加えて動くまでに時間がかかるのでリスポンスが悪い。   コーン紙に加えるとすぐ動くのでレスポンスが良い。
 表現力(振動のきめ細さ)  慣性の法則から大きく働く。要するに動きの方向を変えにくい。
(鈍重)
 
  慣性の法則からあまり働かない。要するに動きの方向を変えやすい。(軽快) 
均等動作・共振しやすさ   たわみやすい 、ゆがみやすく全体がばらばらに振動する。(前後振動に伴い形がかわる)  たわみにくい、ゆがみにくい全体が均等に振動する。(前後振動しても形が変わらない) 
基準点の静止の問題  従来のスピーカでは、コーン紙が大きく・重いものが振動すれば大きな力が発生して、その力に引きずられて周りも揺れ、その結果、基準点が定まらない。
もうひとつはスピーカが四角い箱に入っているので 、箱の中で空気振動が乱反射してコーン紙やスピーカ全体が揺れて、その結果、基準点が定まらない。

○タイムドメインスピーカが上を向いている理由                             
 大きく重く、柔らかいコーン紙が垂直に向いていると重力により下に力が働いので、コーン紙の全体を正確に前後振動させるのでたいへん難しい。正確な動きをさせるには重力と同じ方向の上下運動をさせるほうが良い。タイムドメインスピーカは小さくて軽いコーンが上を向いている状態ならば、重力はコーン紙全体に均等に架かる。重力方向とコーン紙の振動の向きが同じならば「つぶれる力」が働かない。よって、元の音波が正確に再現する。
 
○上にスピーカが上に向いていたら、音が前に出ないのではという疑問
 それは勘違い、水面に石を落とせば波紋は360度広がる。音も波であるから上下360度球体的な全方向に広がる。ちなみにクラシックコンサートの場合360度どこでも音が聞こえる。クラシック用に設計されたサントリーホールはステージをぐるりと囲むように座席がある。コンサートではスピーカを使わず、楽器から直接出る音を聞くので、演奏者の後に座っていても音が聞こえる。
○コーン紙の周囲に基準点をつくるための工夫
 スピーカ本体の中に重いシャフトを吊し、この重力によってコーン紙を固定。コーン紙など可動部分をシャフトの重さの実に1000倍以上の重さで固定されているので正確な基準点として不動になる。このような重りを吊すことができるのもコーン紙が上を向いているからである。
○円筒のエンクロージャは共振が起きにくい理由。
 コーン紙から発した空気振動でコーン紙を揺らす「共振」が起きないのは、コーン紙は前後振動しているのでスピーカの箱の中で裏側にも音が出る。この振動が箱の中の空気が反射しまくってコーン紙を揺らしているので邪魔になる。これを吸い取る工夫が必要である。そこで円、筒、球は最も力を分散しやすい。自然で上部な形でバランスの良い形である。
○裏音を吸音にするための工夫
 タイムドメインのエンクロージャが細長い筒型である。この形が裏音を消すために有効。。原理は車のマフラーと同じで筒を通っていくうちに音が小さくなるわけで、さらにシャフトの周りには、音の流れを遮断・妨害する材料(吸音材)を巻いており、この二つの工夫により、裏に出る余計な音が最小限にしている。
○小口径のユニットで低域が出るのはなぜか。
 低域がボックスタイプの場合、背圧でコーン紙の振動を押さえ込んでいるが、小口径ユニットは背圧の影響が少なくなるため、より低域が出やすい。

          ※タイムドメインスピーカ開発者・由井啓之氏の解説から転載させていただいた。

 

タイムドメイン製アンプのフロント・リアパネル
   

アンプの特徴

○タイムドメイン製のアンプは内部ケーブルが細く、部品が乗っている基盤も小さい。
  ○このアンプは2つの入力系統があり、CDプレーヤー、レコードプレーヤーを       
         切り替えられ便利である。                                                               
   ○タイムドメインスピーカーを視聴しての感想
     16畳のフローリングで従来のタンノイスピーカーシステムを聞いていたが、今回は知人
     の薦めでタイムドメインスピーカーと比較視聴したところ、高価なオーディオシステムに劣らず、
     どのジャンルにも合う素晴らしい音色に改めて感動した。弦楽器、ボーカルが忠実にリアルに
     再生している。臨場感があって奥行きのある音色が出ている。
。>
     スピーカユニツトが小さいだけに低音の出方に気になったが、音階の分かる低音が出ている。
     

 

駆動方式 ベルトドライブ
駆動モータ  DCサーボ
回転数   33/45回転
カートリッジ型式 VM型
ターンテーブル アルミダイガスト仕上げ 
特徴           
フルオート再生だから簡単操作
フォトイコライザー機能内蔵
フォノアンプ内蔵機器がなくてもスピーカを
繋いでレコードを聴くことができる。

レコードプレーヤーは、タイムドメイン由井氏お奨めの安価な商品(実売8000円程度)で、
由井氏はゴムマットを取り、10円玉3個を代わりに使用している。私はラボビートによる
追加チューニングでCDより生々しい音を奏でるとは不思議である。旧態前とした
アナログレコードにこんなに音がつまっている。お蔵入りしていた250枚の
レコードを聴くのが楽しみになった。                         

このページは、自分がタイムドメインスピーカの理解度を高めるため、
ホームページの情報および由井啓之氏の技術誌を参照させていただいた。

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